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hpgrp GALLERY ディレクターに聞く「ニューヨークで作家になるということ」

東京とニューヨークでギャラリーを運営し、日米の現代アートシーンを俯瞰する戸塚憲太郎さん。野村康生さんの才能をいち早く見出し、2012年から個展の開催や海外アートフェアへの出品など、キャリアアップのきっかけを提供し続けてきました。
アートシーンの中心地に身を置くからこそ体感する「世界で成功する作家」の条件とは?そしてニューヨークへ活躍の場を広げる野村さんへのエールとは?

 

 

年間100以上のアーティストと作品を扱うディレクターが語る「作品の強度」

 

僕は武蔵野美術大学で彫刻を学び、卒業後は作家を目指してニューヨークの大学に通っていました。ですが30代を迎え、将来設計を考えていた時期に、現在の職へと転身することになりました。

 

 

 

それからしばらくは東京でファッションの展示会を企画運営する部門で経験を積み、2007年にhpgrp GALLERY TOKYOを社内に立ち上げました。ディレクターとしてアート作品の展示販売はもちろん、国内外のアートフェアをプロデュースしたりアートアワードを設立するなど、他のギャラリーにはないような活動を展開しながら、2016年から再びニューヨークへと戻ってきました。

 

 

青山に位置するhpgrp GALLERY TOKYO。写真は2017年に行った野村康生個展の様子。

 

多岐に渡るプロジェクトの中で若手作家と出会う機会も多く、多い年は年間100名を超えるアーティストの作品を扱うこともあります。その中で特に印象に残る作品もあり、あえて要素をいうならば「新しさ」でしょうか。今までに見たことのないビジュアルやコンセプトを持った作品に出会った時は、たとえアーティスト自身のキャラクターは忘れても作品のことはしっかりと記憶に残りますね。

 

 

世界共通言語で明確に説明できる、野村作品の強み

 

野村くんも印象に残った作家のひとりです。2012年に新宿のギャラリーで開催していた個展で作品を見たのが最初の出会いでした。

 

その頃の日本では、コンセプトが曖昧で感覚的な作品が多く僕自身物足りなさを覚えていた中で、珍しく作品を明確に説明していた姿が特徴的でした。その後も「葛飾北斎の浪裏という作品がなぜ美しく見えるか」など彼なりに研究した成果を作品化していましたが、「こんなにもコンセプトをはっきりさせて、ものを描く人がいるんだな」と強い印象を持ちましたね。

 

葛飾北斎の浮世絵に潜む法則性を抽出して作品化した「Hokusai Set」

 

野村くんが主に作品に取り入れている「数学」という要素は国や文化をこえても理解可能な世界共通言語と言えます。さらに北斎やダヴィンチといったマスターピースを巧みに使って自身の作品を文脈化しているので、海外で展示をしても反応がとても良い。ニューヨークへ持っていったとしても、100%英語で説明できるので受け入れられやすいと思います。

 

 

ニューヨークでアーティストとして生き残るには、日本とは異なるスキルが必要だ。

 

僕はアートディレクターとしてニューヨークで活動するようになって2年半くらい経ちますが、そこで感じるのは「世界で勝負する覚悟のある作家が来る場所」ということ。日本のアーティストには「世界」という意識があまりない人が多いように思います。

 

野村くんも今冬に渡米しますが、他のアーティストがみんな何をしているか?その目でしっかりと見て欲しい。これでもかというほど勝ち続け、ブランディングや社会的立ち位置なども含めて自身の価値を高められるものは全てやり尽くす。どんな作家像を目指すかによっても変わりますが、ニューヨークでアーティストとして成功するには、多種多様なスキル、才能、努力、つまりはその人間の総合力が問われ、試される世界です。

 

現代を代表するアーティストの一人 Ai Weiwei(アイ・ウェイウェイ)のパブリックアート。NY市全体を使って大規模に展開され話題を集めた。

 

ニューヨークで毎年開かれるアートフェアの様子 (ART on PAPER, 2018)大小様々な規模で開催され、世界中からギャラリーとコレクター、アート関係者が集まる。

 

hpgrp GALLERY New Yorkオープニングレセプションの様子。

 

「作品」そのものの良さや強度というものはもちろん根本に必要ですけど、才能のあるアーティストで溢れているニューヨークにおいて、それは一つの側面にしかすぎない。そこまでやってもなお、人や時代との巡り合わせといった「運」がなければ生き残れない本当に厳しい世界です。

 

僕は野村くんにはそれができる能力と運を持っていると思いますし、ぜひ現場に揉まれながらチャレンジしてもらいたい。いずれ日本とアメリカの架け橋になれるような、そういうアーティストに育って欲しいなと願っています。

 

このMASプロジェクトの話を伺って期待するのは、サポートしてくださる皆さんもぜひ一度野村くんが挑戦する世界がどういう場所なのかを実際に足を運んで体感していただきたいです!来れば自ずと見えるものが、ここニューヨークにはあると思います。

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