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15歳の日常の景色を一変させる「魔法の45分間」に密着

「めがねと旅する美術展」の関連プログラムとして、野村康生さんの出身校である島根県立益田高等学校を舞台に野村さんの特別授業が行われました。
MAS実行委員会もその授業に密着してきました。

 


テーマは「『私』というコンセプトを立ち上げよう!」

 

「コンセプト」とは、美術館などで「作者の意図」や「展覧会の意図」として紹介されるものですが、野村さん曰く「概念」を意味するそうです。
「今、君たちが学校で習っているのは言ってしまえば全て人類の『歴史』であって、歴史とは『概念の獲得』である!」という力強い言葉から授業が始まりました。

 

特別授業で絵を描くものと思っていた生徒たちは、何が始まるの?といった様子で目を丸くしていましたが、見る見るうちに野村さんの深くて面白いお話に引き込まれていきました。

 

 

今回の特別授業のために用意されたプランシート

 

 

 

この授業で最も中心になったのは「私」という存在を客観視して掘り下げる作業でした。
生徒に配られた「マンダラート」と呼ばれるチャート表。
自分を中心に、家族や生まれた場所、年代などのキーワードを周りに書き込んでいき、15年間の「私」を形成してきた「環境要因」を表出させていきます。

 

大谷翔平選手もこの手法でトレーニングメニューを決定し、自分を高める努力をしていたそうです!そんな高校生にもキャッチーな話題を盛り込みつつ、すごく高度な授業が展開されていきました。

 

 

そして、授業のハイライト。生徒には真っ白な紙が一枚配られました。
それを教科書の一番後ろのページに貼り付けます。

 

いまこの一分、一秒が「歴史」のもっとも先端であること。
そして、いまを生きる私たちにはこの真っ白な1ページが与えられている。
「私」を見つめ、「私」を知り、そしていかにして「私」を広げていくのか?

 

アートの役割は、そうして築き上げた「私」の概念をさらに揺さぶり、拡張させるための装置なのだという野村さんのメッセージには、15歳の子供達以上に大人になった私たちに響くものがありました。

 

最後に、美術の担当教諭からもメッセージが届けられました。

 

ー授業の雰囲気が野村さんが来られた後は、少し変わった気がします。
美術に対する姿勢の変化や、必要性を感じることができたのではと思い、喜んでおります。
卒業生の活躍を間近で見ることができ、生徒にとっても大変ありがたかったです。野村さんの活躍を、益田高校一同楽しみにしております。

 

45分間という短い時間で、生徒たちの見ていた何気ない日常や、学校の授業といった景色に魔法をかけて一変させる。
まさに、これがアーティストの仕事なんだと感じた時間でした。

 

益田高校の美術室には野村さんが高校3年生時時代に描いた石膏デッサンが今も飾られていました!野村さんも20年ぶりの再会に感慨深げな様子でした。

 

 

授業を終えた生徒たちから多数の感想が寄せられていますので一部ご紹介します。

 

 

“アイディア創出シートをしてみて思ったことは「自分」って結局なんだろうということです。改めて自分と向き合ってマンダラートをかくということになると、自分を一言で言ったら何だろうと分からなくなりました。このことをきっかけに自分と向き合えたし、今後の授業に活かしていけるのではないかなと思いました。”

 

 

“今回の美術の授業はこれからの私の美術にとってとても重要なものになりました。私にはとても印象に残った言葉があります。それは「歴史とは概念の獲得である」という言葉です。だから私は一秒一秒を表現し、創造する創造力を立派に身につけたいです。そして、歴史の波に飲まれない、これからの社会で生きていける人間になりたいです。”

 

 

“今回野村さんの話を聞けて本当に良かったです。私は野村さんが話された中で特に心に残っていることがあります。それは、この絵は好きだ!この絵は嫌いだ!と思ったところを、なぜ自分は好きなのか?嫌いなのか?じっくり考えることが大切だ。という内容です。それを考えることで”自分が見えてくる”、”自分を知ることができる”というのを聞いて、なるほどと思いました。私はまだ自分のことがよく分からないので、しっかり考えてみようと思いました。”

 

 

“同じ状況でもアンテナをどこに向けるかによって感じることは異なるということを知りました。絵を描いたりするのかと思いましたが、しかし今回の自分探しマップを書いてみて、作品を作ることも良いけど、自分自身を見つめて、自分の歴史を知ることで良い作品ができるのではないかと感じました。
最後の白い紙を貼った時に、何になる!とは書けなかったけど、何か幸せになりました。”

 

 

“自分について考えることができました。これから必要となるのは「創造性」で、AIに負けないように、人間だけができることを考え、将来、自分だけができる、デザインとか美術の仕事がしたいと思いました。”

 

 

“僕が野村さんの授業で1番心に残った言葉は「今、僕たちは長い歴史の中の1番はしっこを生きている」という言葉です。今までそういう風に考えたことがなかったので、印象がとても強かったのを覚えています。”

 

 

“野村さんの話を聞いて、改めて自分を見つめなおすことができました。ぼくは周りのたくさんの人たちに支えられて育てられてきたことがわかりました。あと人は環境によって見ているところが違うことも初めて知りました。”

 

 

“お話のはじめの方に、裏に飾られているマルスのデッサンが野村さんが描かれたものだと知って驚きました。はじめて描いた石膏像がマルスで思い出深かったので描いた方は誰なのかと密かに気になっていたからです。アイデア創出シートはやってみると意外に難しく、全ての欄を埋めることができませんでした。家で自分と向き合って少しでも多くの欄を埋めたいです。”

 

 

“難しい授業なのかな…と心配でしたが、私たちが今習っていることは全部歴史だというのがとても心に残りました。私は歴史が好きなので、とても勉強が楽しいものに思えるようになりました。マインドマップをかくのが楽しかったです。自分でも家とかでかいてみようかな?と思いました。”

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